整えて、還る。
その言葉の背景にあるものを、七つの章として置いています。
ページをめくるように、ゆっくりと読んでいただけたら嬉しいです。
- 概念(がいねん):整うとは何か
In the quiet ground of alignment - 揺動(ようどう):自然に生まれる変化
Within the natural ebb and sway - 微細(びさい):変化の輪郭を聴く
Listening within subtle shifts - 姿勢(しせい):触れるという関わり
With presence in every gentle touch - 空間(くうかん):静けさが作用するとき
When quiet begins to shape movement - 名称(めいしょう):リーンに滲む気配
Where a name settles into quiet meaning - 円環(えんかん):めぐり続ける縁
As quiet awakens gentle motion

1. 概念:整うとは何か
In the quiet ground of alignment
身体はつねに変化の中にあります。
姿勢、呼吸、感情。
そのすべてが日々、静かに揺れ、変わり続けています。
「整う」という言葉は、ときに “元の形に戻すこと” のように扱われることがあります。
しかし私は、それとは少し違う景色を見ています。
整うとは、過去の自分に戻ることではありません。
また、正しさに合わせることでもありません。
身体が本来持っている “向かいたい方向” に、そっと気づいていくこと。
そして、向かいたい方向へ、自然と流れ始めるのを邪魔しないこと。
その静かな動きに寄り添い、身体が自分自身の地図を思い出す時、人は自ずと整う方向へ向かっていきます。
2. 揺動:自然に生まれる変化
Within the natural ebb and sway
私たちの身体は、いつもわずかに揺れています。
呼吸、姿勢、こころの状態——
生きているかぎり、そのバランスは静かに変化し続けています。
その揺らぎ自体は、決して悪いものではありません。
本来の身体が持つ “調整しながら生きている働き” でもあります。
けれど、生活の負荷が重なると、その小さな揺らぎが大きな偏りとして表に出てくることがあります。
それが不調の形になることもあれば、ただ少し休めば自然に収まる変化であることもあります。
大切なのは、揺らぎをすぐに「直すべきもの」と決めつけないこと。
まずは、その揺らぎがどんな意味を持って出てきているのかを丁寧に受け取ることだと考えています。
そのうえで、身体が戻ろうとしている流れを妨げないように
そっと負担を減らす——
整体は、そのための小さな手助けにすぎません。

3. 微細:変化の輪郭を聴く
Listening within subtle shifts
変化はいつも、微細なところから始まります。
手を添えたときの温度のわずかな違い。
呼吸が深くなる前の、ごく短い沈黙。
骨の奥で、重心がふっと傾こうとする瞬間。
明確な音よりも、その奥にある “気配” に意識を向けること。
日々、微細なもののほうに心が動く。
言葉になる前の違和感。
動く前の予兆。
整体の仕事では、その意識が大きな役割を果たしています。
ただ押したり動かすのではなく、ただ耳を澄まし、変化の輪郭を聴く。
小さな兆しが見えたとき、身体は自ら、整う方向へ歩み始めます。
4. 姿勢:触れるという関わり
With presence in every gentle touch
触れることは技術ではありません。
それは姿勢であり、関わり方です。
「整えよう」と意図が強くなると、身体はすぐに固く閉じてしまいます。
だから私は、何かを “する” よりも先に、相手の身体が語り始めるのを待ちます。
触れられた瞬間、身体は多くのことを返してきます。
- どこに緊張が残っているのか
- どこに流れが止まっているのか
- どの方向へ向かいたいのか
私はその声を押し流すことなく、ただそばに立つ。
変えるのではなく、変わろうとする力に伴走する。
触れるというのは、相手を導くことではなく、“共に在る” という姿勢そのものです。

5. 空間:静けさが作用するとき
When quiet begins to shape movement
施術は、身体に触れた瞬間から始まるわけではありません。
空間そのものが、すでに働き始めています。
深く息を吸える空気。
余白のある静けさ。
照明の柔らかさ。
歩き方が自然とゆっくりになる温度。
それらはすべて、身体の反応をやわらかくします。
人は、安心した空間に入ると、緊張をほどこうと努力しなくても、身体が自然とゆるむ方向へ動き出します。
私はこの場所を、誰かが「頑張って変わろう」とする場所にはしたくありません。
そのままで大丈夫だと感じられる空気。
呼吸が深くなる静けさ。
空間はただの背景ではなく、変化を支える大切な要素です。
6. 名称:リーンに滲む気配
Where a name settles into quiet meaning
「リーン」という名には、
はっきりとした一つの意味はありません。
- 還る(Return)
- 円(Circle)
- 縁(En)
- 練(Ren)
- 連なり(Link)
それらが淡く滲むように重なり合い、自然とこの形になりました。
ロゴの “e” が反転しているのも、意味を強く主張したいからではありません。
視点をそっと裏返したときにだけ見える、その “静かな気配” を残したかったのです。
名前とは、説明されるものではなく、触れた人の中で輪郭が立ち上がるもの。
必要以上に語らず、ただそこに佇むように存在していたいと思っています。

7. 円環:めぐり続ける縁
In the quiet circle where connection returns
人が出会い、関わり、変化し、また歩き出す——
その連なりには、言葉にしにくい静かな巡りがあります。
整体の仕事をしていると、その巡りの中に、自分もそっと含まれていることを感じる瞬間があります。
ある人は、不調をきっかけにここへ来て、またある人は、生活の変化の節目に訪れます。
誰かの紹介によってつながることもあれば、偶然のように見えて、必然のような出会いもある。
そうした一つひとつのご縁が重なり、私の仕事は成り立っています。
からだの変化がゆっくり巡っていくように、人とのつながりもまた、静かにめぐり続けるものだと思っています。
続く関係もあれば、しばらく離れて、またふと戻ってこられることもある。
そのどれもが、不自然ではなく、自然な円の流れの中にあります。
円環とは、終わりではなく、連なりそのもの。
関わりがひとつの円となり、また次の円へとつながっていく。
その巡りの中に身を置けることを、私は大切にしています。
ここに来てくださる方とのご縁が、どうか穏やかで、誠実なものでありますように。
—— レン・ヤジマ