映画「デリカテッセン」「響け!情熱のムリダンガム」「ギルバート・グレイプ」「ボディービルダー」感想

2026.6.06

最近見た4本の映画。
ジャンル、テイストもバラバラでしたがどれも素晴らしい作品でした。

『デリカテッセン』

『アメリ』の監督としても知られる、ジャン=ピエール・ジュネとマルク・キャロによる作品

【あらすじ】

核戦争のあと、世界がすっかり変わってしまった時代。
主人公は仕事を求めて、「デリカテッセン」という肉屋を訪れます。
そこはただの肉屋ではなく、仕事を求めてやってきた人間を殺し、食料にしているという、恐ろしい秘密を抱えた場所でした。

【感想】

あらすじだけを見ると、かなり暗くて、ホラー色の強い作品に思えますね。
しかし、実際には、そのホラー要素より、ユーモアやコメディのような雰囲気が強い映画でした。

肉屋の上には、不思議で奇妙な住人たちが暮らしています。
役に立つのか分からないようなおもちゃを作って生計を立てている人。
幻聴に悩み、自殺を試みるたびに何かが起きてうまくいかない婦人。
愛嬌があるのに、少しおっちょこちょいな肉屋の娘。
地下では、カエルやカタツムリと一緒に暮らしている老人もいます。

肉屋を含め、出てくる人物はみんな少しユニークです。
そのユニークさが冷たくはなく、どこか愛嬌がありコミカルに映るので、設定のダークさに反して、作品全体には不思議なポップさがありました。

画面のつくりもとても印象的でした。
斜めの構図が多く使われていて、不安を煽るような演出も多いです。
普通なら不安定さにつながりそうな感覚が、この作品ではむしろ明るさや独特のリズムになっていて、絶妙なバランスで成り立っていました。

小物のデザインも秀逸で、どこか童話の中に出てきそうな、少し古びていて、可愛らしいものばかりです。
そうした細部が、この作品の世界をより濃く、より愛着の湧くものにしていたように思います。

他ではなかなか見ない、独特の世界観を持った作品だと感じました。
個人的にはかなり好みです。
とくに良かったのは、荒廃した世界の中にどんと建っている肉屋の建物でした。
どうも私は、荒廃した世界に残る大きな構造物に弱いようです。

どことなくティム・バートンにも通じるような感触があるので、そのあたりの作品が好きな方には、きっと惹かれるものがあると思います。

実は『アメリ』はまだ観たことがないので、次はそちらも観てみようと思いました。

『響け!情熱のムリダンガム』

THEインド映画

【あらすじ】

ムリダンガムという太鼓の職人である父を持つ主人公が、伝説的なムリダンガム奏者の演奏に出会い、心を突き動かされる。
そこから自分も奏者を目指して歩み始めるのですが、道のりは決して平坦ではありません。
挫折や葛藤を抱えながら、それでも少しずつ前へ進んでいく物語です。

【感想】

最近、インド映画が気になりはじめていて、少し前には『きっと、うまくいく』も観ました。
今回の『響け!情熱のムリダンガム』も、やはり歌や踊りの場面が多く、どこかミュージカル映画のような華やかさがあります。

どうやら、インド映画では歌や踊りを通して感情を表現することが多いそうです。
広い土地の中で、文化や言語の違いを越えて伝わりやすくするため。
あるいは、祈りや願いを歌や踊りにのせてきた背景があるため。
そして、あえて現実から少し離れた表現をすることで、観る側を物語の中へ深く連れていくため。
そうした理由があると知って、なるほどと思いました。
背景を知ると、作品の見え方が少し変わりますね。

この作品では、主人公にいくつもの試練が訪れます。
自分の未熟さに苦しんだり、理不尽な扱いを受けたり。
それでも諦めず、音楽を通して自分の在り方を探し続ける姿が印象に残りました。
真っ直ぐで、不器用で、それでも前へ進もうとする。その姿に、自然と心を動かされます。

劇中には、さまざまな土地を訪れ、伝統音楽に触れていく場面もあります。
そこからは、インドという国の広さや、それぞれの土地に根づいた文化の豊かさが伝わってきました。
同時に、階級や慣習のようなものも、静かに顔をのぞかせていたように思います。

ひと言でいえば、インドという土地の熱や音楽、文化の厚みがぎゅっと詰まったような作品でした。
ただの音楽映画ではなく、夢や誇り、継いでいくものの重さまで感じられる一本だったと思います。

余談

実家に昔からムリダンガムがありました。
見ている間、父がそれを奏でている姿も思い出しました。

父の姿を思い浮かべると何かを演奏している姿が思い浮かびます。
自分が音楽を好きになったのもそんな光景が、脳裏に焼き付いているからなのでしょう。

『ギルバート・グレイプ』

若き日のジョニー・デップと、レオナルド・ディカプリオの共演

【あらすじ】

主人公のギルバートは、知的障害のある弟アーニーと、過食症で家から出られなくなってしまった母親を支えながら暮らしています。
変わり映えのしない日々の中で、ある時、トレーラーハウスで旅をする一家と出会い、そこから少しずつ物語が動きはじめます

【感想】

まず何より、ジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオの共演に強く惹かれました。
ジョニー・デップは、気のいい兄ちゃんという言葉がよく似合うような佇まいで、自然な雰囲気がありました。
ジョニー・デップの独特の間の取り方は良いものですね。
一方で、レオナルド・ディカプリオの演技はこの頃からすでに印象的で、無邪気さや危うさの中に、ふと理性的な表情がのぞく瞬間があり、その美しさに目を奪われました。
この頃からレオ様でしたよ。
ふたりの間に流れているのが友情なのか、家族愛なのか、そのどちらでもあるのか。はっきり言葉にはできませんが、見ていて心があたたかくなる関係でした。

作品全体には、素朴でどこか田舎町らしい空気が流れています。
街の中はほとんどが顔見知りで、日々はゆっくりと繰り返されていく。
変わらない人間関係と、少し閉じた日常。
そんな時間が、この先もずっと続いていくような安心感があります。

ですが、その静かな日常の中に少しずつ変化が入り込んできます。
旅をする家族との出会い。
大型スーパーの出店計画。
知り合いの事故死。
そして、母親がある出来事をきっかけに外へ出ることになる。

そうした出来事が積み重なるにつれて、主人公もまた、今の自分を見つめ直しはじめます。
家族との関係も少しずつ変わり、それまで抑えてきた自分自身の気持ちが、ようやく表に出てくるようになる。
その流れが、とても静かで、けれど確かなものとして描かれていました。

最後には、家族という呪縛からの解放されたかのようにも見えます。
ですがそれは、家族を完全に断ち切るという意味ではなく、変わらなくていいものはそのままに、変わっていくべきものは少しずつ変わっていく。
そういう終わり方に感じられて、とても心に残りました。

家族というものは、時に重たく、時に支えにもなるものだと思います。
離れたいと思っても簡単には離れられず、だからこそ余計に深く絡みついてくる。
この作品は、そうしたやっかいさも、あたたかさも、どちらも否定せずに映していたように思います。

派手な作品ではありません。
静かな日常の中で少しずつ何かが動いていく、その感触がとても丁寧で、見終えたあとにじわりと残るものがありました。

『ボディービルダー』

ボディービル版『ジョーカー』が謳い文句

【あらすじ】

ボディービルで有名になることを夢見て、日々トレーニングに明け暮れる主人公。
なかなか結果に結びつかず、ステロイドやドラッグにも手を出してしまうものの、それでも状況は好転しません。
意中の女性とのデートもうまくいかず、家の補修を頼んでも納得のいく仕上がりにはならない。
行き場のない鬱憤は、少しずつ周囲へ向かい、当然のように物事は悪いほうへ転がっていきます。

そんな中、憧れていたボディービルダーから連絡が入ります。
ようやく救いが訪れるのかと思いきや、そう単純にはいきませんでした。

理想として見ていた存在は、想像していたものとは違っていた。
その現実に触れたとき、主人公はさらに深く絶望へ沈んでいきます。
自暴自棄になり、すべてがどうでもよくなる。
ですが、それでも最後の一線だけは越えないまま、物語は静かに幕を下ろしていきます。

【感想】

この映画は、ボディービル版『ジョーカー』と評されることもあるようです。
ただ、実際に観てみると、自分は少し違う感触を受けました。

『ジョーカー』には、狂気や悪の美学のようなものがあった。
一方で『ボディービルダー』から感じたのは、人の弱さや苦しさ、そして、それでも踏みとどまるしかないという切実さでした。

序盤からずっと悪いことばかり続きます。
悪い方へ悪い方へひたすら転がっていくので、きっと最悪のバッドエンドを向かえる映画だなと想像しました。
「ミッドサマー」や「ダンサー・イン・ザ・ダーク」や「ミスト」のような、後味の悪いと言われている映画と、同じジャンルだと思い身構えていました。
(上記の映画は上記の映画で、そこからしか得られない栄養があったりするので個人的に好きだったりはしますが…)

そして、終盤、主人公はすべてが取り返しのつかない方向へ向かう、ぎりぎりのところまで行きます。
きっと、ここで踏み越えて、あの印象的な笑顔のアップで終幕であったらさらにインパクトの強い作品になっていたでしょう。
それを期待している自分もいました。
そんな構想もあったとも感じました。

それでも、苦悩、葛藤、踏みとどまるしか無い現実、それに立ち向かう勇気を描こうとしたこの作品は、かえって良いものになったと感じました。

派手さのある映画ではありません。
アーノルド・シュワルツェネッガーやスタローン作品のように美しい筋肉に酔いしれる作品でもありません。
ただ、だからこそ追い詰められながらも崩れ切らない人間の姿が、胸に残る作品でした。

余談

学生の頃自分も強くなるために、と思い身体を一生懸命に鍛えていた時期があります。
それは、なかなか結果につながらず、途方に暮れることばかりでした。
身体も心も不安定な状態でした。
主人公の姿がその頃の自分とダブりました。


それでも、それがあったからこそ、見つけられたものがありました。
自分のためにと思い培った経験や知識を仲間が欲してくれました。
トレーニングのサポートやマッサージをすることで、とても感謝されました。
自分の心地良い居場所を見つけられた感覚がありました。
そんな経験がスタート地点にあるんだよな。
そんなことを思い出させてくれました。

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レン・ヤジマ

整体サロン『リーン』