NOTES

私にとって、ぬか漬けは最高の相棒 ~腸と整体 骨盤について~

2026.9.02

ぬか床を手入れする様子のイラスト

私とぬか漬けの出会い

巷でよく見かける、

「腸内環境を整えましょう」

「腸内環境のために乳酸菌を摂りましょう」

そんな言葉を信じ、昔の私はいろいろな乳酸菌を試したり、発酵食品を積極的に取り入れたりしていました。
ヨーグルトに始まり、乳酸菌飲料を手に取り、キムチや納豆なども積極的に食べていました。

そういえば、一時期は、乳酸菌飲料がコンビニから姿を消すほど話題になったこともありましたね。

しかし、世間で言われているほど、私は体調の変化を感じることがありませんでした。
頭では「腸を喜ばせることは身体に良いことだ」と理解していましたが、体感としては伴わない。
そのため、どこまで本当なのだろうと、どこか疑問も付きまとっていました。

そんな中で出会ったのが、ぬか漬けでした。

本屋で出会ったぬか漬け

最初の出会いは、たまたま立ち寄った本屋でした。
一角にぬか漬けを特集した本が積まれていて、そこに、
「きゅうりをぬか漬けにすると栄養価が上がる」
という内容が書かれていました。

「今なら、付属のキットでお手軽にスタート出来る!」
そんな一文に興味が惹かれました。

当時の私は、食事に対して「おいしいか」よりも、「いかに栄養価の高いものを摂るか」をかなり重要視していました。
きゅうりは食感も味も好きだったのですが、当時の私は「栄養が少ない野菜」というイメージを持っていて、あまり食べる意味を見いだせずにいました。

そんな私が、その本を手に取るのは自然な流れでした。

実際、文部科学省の食品成分データベースを見ても、生のきゅうり100gに含まれるビタミンB1は0.03mgなのに対し、きゅうりのぬかみそ漬けでは0.26mgとなっています。
農林水産省も、野菜によってはぬか漬けにすることでビタミンB1が10倍以上になる場合があると紹介しています。

ジップロックから始まったぬか床

始めた頃は、ジップロックの袋の中にぬかと野菜を入れて育てていました。
ぬか床を一からつくる場合、最初に「捨て漬け」といって、キャベツの外葉や大根の皮などを入れ、ぬか床の発酵を進める工程があります。
当時の私は、その捨て漬け用の野菜を捨てることが、もったいなく感じました。

そして、食べてしまいました。

今調べ直してみると、作り始めのぬか床はまだ微生物の状態が安定していないため、捨て漬けした野菜は文字どおり捨てるのが基本です。
最初は塩っ辛さが強かった記憶があります。

ですが当時の私は、

「捨て漬けでこれだけ風味がつくのであれば、しっかり漬かったらもっとおいしいはずだ」
と思いました。

ここが、私がぬか漬けにはまり出したスタートでした。

毎日のようにぬか床をかき混ぜる。
取り出した野菜の風味が、毎回少しずつ違う。
ぬか床の中で菌が活動しているような感覚があり、菌そのものを育てているような楽しさもありました。
続けていくと次第に愛おしさまで感じるようになり、

「暖かいほうが発酵が進むだろう」

と思って、ぬか床と一緒にお風呂へ入ったことまであります。
今考えると、おすすめできる管理方法ではありません(笑)。

ぬか床は温度が高すぎると発酵のバランスが崩れたり、品質を悪くしたりする可能性があります。

それでも、それくらい当時の私はぬか床を育てることそのものを楽しんでいました。

食卓で本を読むレン・ヤジマのイラスト

初めて身体で感じた「腸」の変化

次第に味もこなれてきた頃。

いつものようにぬか漬けを食べると、その直後からお腹がぐるぐると鳴り出したことを覚えています。

そのあとトイレへ駆け込みました。

私はもともと便通が悪いほうではありませんでしたが、その日はいつも以上にすっきりと出た感覚がありました。

身体まで少し軽くなった気がしました。

さらに印象に残っているのが、その翌朝です。

当時の私は、朝の身体のだるさをよく感じていました。
目覚めも悪く、朝からネガティブなことを考えてしまったり、仕事へ向かう足取りが重かったり。
心も身体も重く、朝の時間そのものが憂鬱でした。
何とも言えない不安感を紛らわせるために、エナジードリンクに頼ることもありました。

ですが、その日はとてもすっきりと起きることができました。
やる気もあって、家を出たときの空気まで、いつもより晴れやかに感じたことを覚えています。

もちろん、今振り返れば「ぬか漬けを食べたから翌朝すべてが変わった」とまでは、断定することはできません。

その日の睡眠や食事、仕事の状況など、さまざまな要素があったはずです。

それでも私自身にとっては、
「腸の状態と身体や気分は、思っている以上につながっているのかもしれない」
と初めて身体で感じた出来事でした。

そこからぬか漬けにはまり、気づけば10年近く続けています。

本棚とぬか漬けのイラスト

ここで一度、ぬか漬けのすごさをご紹介します

まず第一に、玄米を精白するときに出る米ぬかには、ビタミンB群などさまざまな栄養素が含まれています。
ぬか漬けでは、その一部が漬けている野菜へ移ります。
先ほど触れたように、特にビタミンB1は増えやすい栄養素のひとつです。

そしてもうひとつが、発酵です。

ぬか床の中にはさまざまな微生物が存在しますが、熟成していくと乳酸菌が優勢になっていくことが研究でも確認されています。

ぬか床と野菜は、ただ味を移し合っているだけではありません。
菌が増え、乳酸などがつくられ、香りや酸味、うま味が少しずつ変化していきます。

毎日味が少し違う理由も、こうした小さな生態系が動いているからなのだと思うと、ますます面白く感じます。

今まで腸活をしても体感がなかった方へ

今までいわゆる「腸活」をしてきたものの、なかなか体感がなかった方。

ひとつの選択肢として、ぬか漬けを試してみるのも面白いと思います。

今はスーパーやネットでも、ジップロックのような袋に入った、そのまま使えるぬか床が販売されています。

私が始めた頃より、ずいぶん手軽になりました。

毎日ゼロからぬか床をつくる必要もありません。

きゅうりを一本入れてみる。

翌日取り出して食べてみる。

まずは、それくらいでも良いと思います。

ただし、ぬか漬けは塩分が多い食品でもあります。

文部科学省の食品成分表では、きゅうりのぬかみそ漬け100gあたりの食塩相当量は5.3gです。

健康に良いイメージだけで大量に食べるのではなく、毎日の食事の中で適量を楽しむ。

そのくらいが、長く続けるにはちょうど良いのだと思います。

ぬか床と野菜のイラスト

腸の調子と整体

ここまで、ぬか漬けと腸について書いてきました。
では、整体は腸に対して何ができるのでしょうか。

まず前提として、整体を受ければ腸内環境が整い、腸の調子が良くなる。
そこまで単純なものではありません。

現在のところ、整体によって腸内環境そのものが改善すると言い切れるだけの十分な根拠はありません。

しかし、腸の働きには、自律神経や呼吸、骨盤底筋など、身体のさまざまな働きが関係しています。

整体によって身体の緊張をゆるめたり、呼吸しやすい状態をつくったり、骨盤周辺の状態を整えていくことは、腸が働きやすい身体を間接的に支えるひとつの方法にはなるのではないかと考えています。

1. 自律神経

緊張しているときに働きやすい交感神経。
休息時に働きやすい副交感神経。
これらをまとめて自律神経と呼びます。

交感神経・副交感神経も、胃腸の動きや分泌、血流などの調節に関わっています。
そのため、精神的な緊張やストレスが強いときに、
お腹が痛くなる。
便意が変わる。
下痢や便秘になる。
といったことが起こるのも不思議な話ではありません。

私は、整体は身体が休息へ向かいやすい環境をつくるものだと考えています。

休むべき時にしっかり休める身体。

闘う時には、勇気を持って立ち向かえる身体。

そんなふうに、必要に応じて緊張と休息を行き来できることは、内臓が本来の働きをするうえでも大切なのだと思います。

2. 呼吸とお腹の動き

そしてもうひとつが、呼吸です。

深く呼吸すると横隔膜が上下に動き、それに合わせてお腹や骨盤周辺にも動きが生まれます。
また、ゆっくりとした呼吸は、副交感神経の働きにも関わってきます。

腸の働きには自律神経も関わっていますので、身体の緊張が強く呼吸まで浅くなっている状態から、ゆっくりと呼吸できる状態へ戻っていくことは、身体全体にとって悪いことではないと思います。

施術をしていると、最初は浅かった呼吸が、途中から自然とゆっくりしてくる方もいらっしゃいます。

私は、そうした変化も大切にしています。

3. 骨盤

そして、もうひとつ私が大切に見ているのが骨盤です。

骨盤には、骨盤底筋群という筋肉があります。
骨盤底筋群は、骨盤内の臓器を支えるだけではなく、便を我慢したり、排便するときに緩んだりと、排泄にも関わっています。
実際、骨盤底筋がうまく働かなかったり、排便時に十分に緩まなかったりすると、便を出しにくくなることがあります。

ただし、
「骨盤を一度整えれば、骨盤底筋群が整い、腸の調子も良くなる」
というような単純な話ではありません。

そもそも私は、骨盤調整そのものを少し違った捉え方で考えています。

人体の骨格を描いたイラスト

そもそも「骨盤を整える」とは何なのか

「骨盤が崩れていると腰が痛くなる」
「猫背やストレートネック、肩こりの原因になる」
「スタイルにも影響するから、骨盤を整えましょう」
整体の世界では、よく聞く言葉です。

ですが、そもそも「骨盤が崩れている」とは、何が崩れているのでしょうか。

骨盤は、左右の寛骨と仙骨と尾骨 3種4つの骨で構成されています。

整体師が「骨盤が崩れている」と表現するとき、骨そのものが大きくズレてしまっているのではなく、骨盤周辺の筋肉の緊張や動き、左右への荷重のかかり方などが、うまくまとまっていない状態を指していることが多いのではないかと思います。

では、なぜそうした状態になるのでしょうか。

ひとつには、筋肉のバランスが関係していると考えています。

骨盤には、さまざまな力が集まる

骨は筋肉の働きによって動かされ、それによって私たちは身体を動かしています。
そう考えると、骨盤周辺の筋肉が骨盤の状態に与える影響は、とても大きなものです。

さらに骨盤は、上半身と下半身をつなぐ場所でもあります。
背中やお腹から続く筋肉。
股関節を動かす筋肉。
右脚と左脚から伝わってくる力。
さまざまな方向から力が集まり、それを受け止めながら次の場所へ伝えていくのが骨盤です。

右脚と左脚の筋肉の緊張に差がある。
上半身と下半身の動きがうまくつながっていない。

そうした小さな違いが積み重なれば、骨盤周辺の動きや荷重のかかり方にも影響してきます。

だからこそ、骨盤だけを見ていても分からないことがたくさんあります。

筋肉だけ整えれば良いわけでもない

では、筋肉だけ整っていれば骨盤は安定するのでしょうか。
私は、それも少し違うと思っています。

骨盤の周りに存在しているのは、筋肉だけではありません。
靱帯や筋膜、腱などの組織もあり、それぞれが関わりながら骨盤を支えています。
そして、それらの組織だけが良い状態であれば十分なのかというと、やはりそうではないと思います。

身体は常に動いているからです。

立つ。

座る。

歩く。

しゃがむ。

片脚に体重をかける。

日常生活の中で身体の使い方が変わるたびに、骨盤周辺にかかる力も変化していきます。

施術ベッドの上で一度きれいな状態になったとしても、その姿勢のまま一日を過ごすわけではありません。

「正しい位置」に固定することが目的ではない

だから私は、骨盤調整の目的は、

「骨盤をひとつの正しい位置へ戻して、そこに固定すること」

ではないと考えています。

そのときの姿勢や動きに合わせて、身体が自然にバランスを取り直せること。

立っているときには立っているときの状態。

座っているときには座っているときの状態。

歩いているときには、その動きに合わせた状態。

その時々に必要な位置や力加減を、身体が自ら選べる。

そんな状態のほうが、身体にとって自然なのではないでしょうか。

骨盤は、動かないように固めておく場所ではなく、身体全体の動きの中で、その都度うまく適応していく場所なのだと思っています。

リーンの骨盤調整

整体サロン『リーン』では、骨盤を整えるときも、骨盤だけを見ることはありません。

骨盤周辺の筋肉や靱帯、筋膜などを確認しながら、必要に応じて調整を行います。

同時に、背中や股関節、脚などの状態も見ていきます。

なぜなら、骨盤は身体から切り離されたひとつの部品ではないからです。

上半身から伝わってくる力。

下半身から伝わってくる力。

右と左の違い。

そうしたものが骨盤を通り、また別の場所へとつながっていきます。

骨盤だけを整えるのではなく、骨盤が身体全体の中でうまく働けるようにする。

そして施術が終わったあとも、身体自身がそのときに必要なバランスを自然に選べるようにしていく。

それが、私の考える骨盤調整です。

施術ベッドのある室内のイラスト

腸も、骨盤も、身体の一部

ここまで書いてみると、ぬか床と身体には、少し似ているところがあるように感じます。

ぬか床の味が悪くなったからといって、

「乳酸菌だけ増やせばいい」

というものではありません。

水分。

温度。

塩分。

混ぜる頻度。

中に入れる野菜。

いろいろなものが関わり合いながら、ぬか床全体の状態が決まっていきます。

身体も同じなのかもしれません。

腸だけ。

骨盤だけ。

筋肉だけ。

自律神経だけ。

どこかひとつを取り出して、それだけを完璧に整えれば身体全体が良くなるほど、人間の身体は単純ではありません。

ひとつの場所が変われば、別の場所にも影響が出る。

そして全体が少しずつ変わることで、ひとつの部分もまた変化していく。

私は整体をしていて、そのようなつながりを感じることがよくあります。

腸活の主役は、やはり日々の生活

ここまで書いてきましたが、腸内環境を整える主役は、整体ではありません。

食事。

睡眠。

運動。

ストレスとの付き合い方。

そして、自分の身体に合った生活を続けていくこと。

まずは、そうした日々の積み重ねだと思います。

整体は、その代わりになるものではありません。

ただ、身体が緊張し続けているときに、一度力を抜くこと。

呼吸を取り戻すこと。

身体のあちこちに無意識に入っている力みに気づくこと。

そして、身体全体がもう一度うまくつながって動ける状態をつくること。

そういう部分なら、整体にもできることがあると思っています。

ぬか床も、何かひとつを入れた瞬間に完成するものではありません。

毎日少しずつ手を入れ、温度や水分を見ながら、菌が暮らしやすい環境を整えていく。

腸も、骨盤も、身体も、それに少し似ているのかもしれません。

何かひとつの「最強の方法」を探すのではなく、

食べるものを整える。

眠る。

身体を動かす。

休む。

必要なときには誰かの手を借りる。

そうしたものが、少しずつつながっていく。

私にとってぬか漬けは、そのことを知るひとつのきっかけだったかも知れません。

10年近く経った今でも、ぬか床をかき混ぜながら、

「今日も元気にやっているな」

と思います。

おいしく食べながら、自分の身体にも少し目を向ける。

これからも、そんな付き合い方を続けていきたいと思っています。

ぬか床のアップ

Picture of レン・ヤジマ
レン・ヤジマ

整体師。横浜・綱島の整体サロン『リーン』主宰。

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